2人で「岡嶋二人」という作家
こんにちは、生方吉子(うぶかたよしこ)です。
岡嶋二人(おかじまふたり)さんは、現在も作家を続けておられる井上夢人(井上泉)さんと田奈純一(徳山諄一さんのコンビ名で、1982年『焦茶色のパステル』で第28回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。
1989年『クラインの壺』を最後にコンビを解消した、伝説の推理作家です。
生方は、岡嶋二人さんの作品が好きで、30年近く前に長編はほぼ全作読破しています。
そんな昔の作家さんの話を書いているのは、最近『おかしな二人』というタイトルの、井上夢人さんが書かれた「岡嶋二人」の回顧録というか、作家としてのドキュメンタリーを読んだからです。
性格も、興味も、行動様式も違う井上夢人(井上泉)さんと田奈純一(徳山諄一)さんのふたりが、なぜ江戸川乱歩賞に応募しようとしたのか、コンビでどのように作品を作り上げていたのか、ということが、実に細かく、時系列で書かれており、作家を目指す方は読んだほうが良い作品です。
そして、とてもおもしろいのです。
誰かと一緒であることの心強さを感じる一方で、作業に関する不公平感を抱くことは、作家でなくとも、仕事をしている人なら日々感じていることではないでしょうか。
誰かと一緒に仕事をしている限り、誰でも感じるストレスを余すところなく書き記しているのが『おかしな二人』なのです。
この本を読み終わって、生方は「岡嶋二人の人生を占ってみよう!」と決断しました。
ふたりの性格は詳しく書き込まれていて、時系列で情報が整理されているのですから、生方は、過去の事実とそのときの運気を重ねてみたくなったのです。
ペンネームと本名で運気を見てみると
はじめに姓名判断です。
岡嶋二人というペンネームは、企業でいうと社名のようなものです。
このペンネーム自体の運気、井上泉さんと徳山諄一さんそれぞれの運気、さらに岡嶋二人+井上泉+徳山諄一の総合運気の4つについて見てみました。
岡嶋二人(8-4-2-2)総格26画
井上泉(4-3-9)総格16画
徳山諄一(14-3-15-1)総格33画
これをまとめたものが、下の表です。
年号 | 作品 | 受賞歴 | 岡嶋二人 | 井上泉 | 徳山諄一 | 総合 |
1982 |
『焦茶色のパステル』 |
江戸川乱歩賞 | 生産 | 生産 | リセット | 悩み |
1983 |
『七年目の脅迫状』 |
障害 | 障害 | 方向付け | 生産 | |
1984 |
『タイトルマッチ』 |
結果 | 結果 | 悩み | 障害 | |
1985 |
『5W1H殺人事件』 『ビッグゲーム』 |
日本推理作家協会賞 長編賞 |
再スタート | 再スタート | 生産 | 結果 |
1986 |
『七日間の身代金』 |
修羅場 | 修羅場 | 障害 | 再スタート | |
1987 |
『珊瑚色ラプソディ』 『殺人者志願』 『ダブルダウン』 |
社交 | 社交 | 結果 | 修羅場 | |
1988 |
『眠れぬ夜の殺人』 『99%の誘拐』 |
吉川英治文学新人賞 | 断捨離 | 断捨離 | 再スタート | 社交 |
1989 |
『クリスマス・イヴ』 『記録された殺人』 『眠れぬ夜の報復』 『クラインの壺』 |
修羅場 | 修羅場 | 障害 | 再スタート | |
1991 | 断捨離 | 断捨離 | 再スタート | 社交 |
江戸川乱歩賞を受賞してデビューした1982年は、総合で「悩み」です。
『おかしな二人』のなかで、プロとして作家活動することについて、大いに戸惑い、悩んだ年とあります。
1983年は、井上夢人(井上泉)さんが「消滅の予感」と書いていますが、この年は岡嶋二人さんと井上泉さんは「障害」の年でした。
最悪の状態であったことが、運気からも読み取れます。
徳山諄一さんは「方向付け」の年であったので、この年に的確な軌道修正ができていれば、岡嶋二人という作家は、もう少し長く書いていたかもしれません。
1984年は、岡嶋二人さんと井上泉さんには「結果」、徳山諄一さんは「悩み」、総合では「障害」です。
この年、岡嶋二人さんは短編を書くことをやめると決断します。
それが、デビューして以来の数年間で決めた方向性であり、井上泉さんにとってはささやかな希望でしたが、これは総合で「障害」という運気ですので、結果としては裏切られることになります。
1984年の段階で、岡嶋二人というシステムが、すでに破綻していたことを意味しています。
1985年は、岡嶋二人さんと井上泉さんには「再スタート」、徳山諄一さんは「生産」、総合では「結果」です。
『おかしな二人』によると、この年は「なにか違うものをやりたい」という井上泉さんの希望が最優先されたような仕事をした一年でした。
まさに再スタート。
単行本は6冊刊行され、岡嶋二人史上最多の年でもありました。
1986年は、岡嶋二人さんと井上泉さんには「修羅場」、徳山諄一さんは「障害」、総合では「再スタート」です。
「修羅場」というのは、ケンカや金銭トラブルなど、思いがけないような事が起こる年なのですが、『おかしな二人』には、「売れない」「ほとんど詐欺に近い」「それまでの仕返しをしているような書き方」と表現されています。
井上泉さんから徳山諄一さんに対して、仕事に関する長文の質問状を送ったのも、1986年6月です。
まさに修羅場の1986年6月の月運は、岡嶋二人さんと井上泉さんは「生産」、徳山諄一さんはリセットです。
このときに、今後の方向性が決まったようです。
1986年7月には、パソコン通信(電子メール)でやり取りするようになり、これ以降、井上泉さんと徳山諄一さんとのやり取りがすべて記録されていくのですから、象徴的です。
『コンピュータの熱い罠』を井上泉さんが一人で書き上げたことが、その後の岡嶋二人作品を大きく変えていくことになります。
1985年までは、徳山諄一さんの興味や趣味から発展した作品が多かったのですが、徐々に井上泉さんが興味を持っていたコンピュータの世界へと向かっていったのです。
だから、総合運気では1986年が「再スタート」なのだと思います。
1987年は、『おかしな二人』によると、作家として非常に苦しかった年でしたが、井上泉さんは新居を八ヶ岳の麓に新築、徳山諄一さんは結婚という、大きな変化をむかえました。
総合の運気が「修羅場」であるにもかかわらず、井上泉さんが「社交」、徳山諄一さんが「結果」であるのは、プライベート面が運気に現れているためでしょうか。
そして、1987年の『そして扉が閉ざされた』は、修羅場の末に井上泉さんが一人で進めることになるのです。
1988年は、岡嶋二人さんと井上泉さんには「断捨離」、徳山諄一さんは「再スタート」、総合では「社交」です。
「断捨離」とは、これまでのことを整理して、次のステージへとすすむ準備をすることです。
このタイミングで徳山諄一さんが「再スタート」という運気なので、コンビ解消が暗示されているといえます。
1988年は、コンビで久しぶりに作り上げた『99%の誘拐』が第10回吉川英治文学新人賞を受賞し、井上泉さんの心情としては納得したのではないかと感じます。
そして1989年は、岡嶋二人さんと井上泉さんには「修羅場」、徳山諄一さんは「障害」、総合では「再スタート」です。
1989年は1986年と同じ年運です。
文章を書いている井上泉さんにとって「修羅場」が続いた年であり、コンビ解消を言い渡された徳山諄一さんにとっては自己過信からの「障害」の年でした。
そして、岡嶋二人という作家は消滅したのです。
姓名判断でみる井上泉さんと徳山諄一さんの相性とは?
井上泉さんは、知識をどんどん吸収し、効率を求め、ときにシビアなタイプです。
努力することを厭わない秀才でもあり、合理的です。
一方の徳山諄一さんも、努力する秀才タイプですが、天才的なひらめきを持った人物で、数字に強いという性質を持っています。
また、生まれながらの社交家であり、人にモノを教えるのが好きです。
こんな2人の相性は、お互いに段取りし、調整していく相性です。
良い相性とはいい難く、どちらかが責任を持つ関係になりやすく、ケンカも絶えません。
江戸川乱歩賞をとるまで、2人がうまくやっていたのは、知識を求める井上泉さんに対して、引き出しの多い徳山諄一さんがネタを与えることができたからでしょう。
井上さん自身も、『おかしな二人』のなかで、徳山諄一さんに飽きてしまった、と書いておられます。
九星気学でみる井上泉さんと徳山諄一さんの相性とは?
井上泉さんは、1950年12月9日生まれです。
本命星:五黄土星
月命星:一白水星
傾斜宮:九紫火星
五黄土星は、九星のなかで最も強い星です。
土に属しますが、腐食作用を持つ原野を表しており、とくに中国の黄土だと言われています。
大地は万物を育てる反面、すべてのものを土に還し、消滅させてしまいます。
井上泉さんは、本命星の五黄土星と月命星の一白水星とは、土剋水(土は水を堰き止める)という相剋の関係です。
行動が精神を堰き止めるので、悩みが深いタイプです。
しかし、傾斜宮の九紫火星が本命星の五黄土星にエネルギーを与える相生の関係にありますから、理性で考えたことより、本音がそのまま行動に出やすいタイプといえます。
行動することで、悩みや迷いが生じやすいのですが、井上泉さんのような方は、行動そのものは間違っていないと信じています。
徳山諄一さんは、1943年8月1日生まれです。
本命星:三碧木星
月命星:九紫火星
傾斜宮:八白土星
三碧木星は、「声あって形なし」と表現されます。
徳山諄一さんが、おしゃべりが得意で、説得力のある話ができたのは三碧木星によるところが大きいでしょう。
徳山諄一さんは、本命星の三碧木星から月命星の九紫火星へ、月命星の九紫火星から傾斜宮の八白土星へとエネルギーが流れる相生の関係です。
本命星が三碧木星の中では、最も運勢が強いと言えます。
行動が確信に変わり、それが信念へと変わるようなタイプですから、井上泉さんの気持ちは理解できなかったかもしれません。
この2人の相性は、これまた、良いものではありません。
徳山諄一さんの三碧木星が、井上泉さんの五黄土星を尅す(木剋土)という関係です。
また、井上泉さんは徳山諄一さんの存在をうとましく思いながらも、なかなか切り捨てる事ができなかったのは、ふたりとも九紫火星を持っていたからではないでしょうか。
井上泉さんは傾斜宮(隠れた性格)、徳山諄一さんは月命星(精神)に九星火星を持っています。
九紫火星は、芸術性や創造性などを意味しており、お互いに共感できる部分があったのだと思われます。
九星気学で性格や運気を知りたい方は、「九星気学 本命星・月命星・傾斜宮でみる運勢 歴史上の人物と著名人」をお読みになってください。
↓
コンビ解消を決めた運命の日とは?
井上泉さんが、徳山諄一さんに決別を言い渡したのは、1989年4月28日だったと書いてありました。
この日の九星盤が下になります。
1989年の年盤では、井上泉さんの五黄土星は北東にあり変化変動、徳山諄一さんの三碧木星は北西にあり歳破がついています。
4月の月盤では、井上泉さんの五黄土星は北にあり本厄、徳山諄一さんの三碧木星は北東にあり変化変動です。
加えて、年盤の五黄土星に三碧木星が回座していますから五黄殺(自滅)の暗示。
さらに、28日の日盤は、井上泉さんの五黄土星は東あり運気が転じるとき、徳山諄一さんの三碧木星は北にあり本厄で日破を帯びています。
井上泉さん、徳山諄一さんのどちらも、良くない運気のときであったことは間違いありません。
井上泉さんは4月に入り、身体的な不調を訴えていたはずです。
そして、徳山諄一さんは、自分の思い通りにいかないことばかりが起こると感じていたはずです。
なにしろ、三碧木星には歳破がついているのですから当然です。
だから、今までと違うことに手を出してもいいのではないかと軽く考えて、徳山諄一さんは井上泉さんに電話しますが、これが破れてしまい、岡嶋二人の消滅を告げられるのです。
この日は、徳山さんにとって大凶の日であったといえるのです。
宿曜占星術でみる井上泉さんと徳山諄一さんの相性とは?
宿曜占星術では、井上泉さんは氐宿、徳山諄一さんは張宿です。
氐宿からみて張宿は「危」、張宿からみて氐宿は「成」という相性で、ふたりは【危・成】の関係になります。
【危・成】の関係とは、一方は、なにか危険な予感を感じますが、もう一方にとっては何事かを成し遂げるには必要な人物という関係です。
お互いにライバル心が起こりやすいので、良い相性がでれば、互いに向上心を持って研鑽する間柄です。
自分からみて【成】の本命宿は、あなたが何事かを成し遂げるために大切な人ですが、自分からみて【危】の本命宿の人とは傷つけあうこともあります。
つまり、徳山諄一さんにとって、井上泉さんは江戸川乱歩賞をとるために必要な人であったということになります。
氐宿からみて張宿は、仕事をきちんとやり、教えてくれるので、吸収できる相手となります。
しかし、氐宿はドライな考え方ですから、張宿もそれに合わせて現実的な話をすると良いのですが、それがうまく噛み合わなかったようですね。
張宿の話し方には独特の味があり、おしゃべりが巧みで、相手の心をとらえることがうまい人が多く、引き込まれてしまいますが、井上泉さんは、徳山諄一さんの話術によって作家への道を目指すのですから、徳山諄一さんなくして作家になっていなかったというのは、本当のところのようですね。
岡嶋二人作品には傑作が多く、古さを感じさせない内容なので、まだお読みになっていない方は、ぜひお読みになってください。
⇒ 氐宿: 宿曜占星術と九星気学・姓名でみる2019年の運気
⇒ 張宿: 宿曜占星術と九星気学・姓名でみる2019年の運気
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